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なぜ災害時はデマが広がるのか?不安な時ほど信じてしまう心理

結論

災害時にデマが広がりやすい理由は、次の5つです。

  1. 正確な情報が出そろうまで時間がかかる
  2. 不安になると、断定的な情報を信じやすくなる
  3. 「念のため」が拡散の理由になる
  4. 同じ情報を何度も見ると本当らしく感じる
  5. 正義感や親切心でもデマを広げてしまう
  • デマを信じる人が、特別にだまされやすいわけではありません。
  • 災害によって不安が強くなり、「分からない状態」から早く抜け出したくなっているのです。
目次

はじめに|地震の直後、SNSには「答え」があふれる

2026年7月28日、熊本県で大きな地震が発生し、SNSでも地震に関する投稿が急速に増えました。災害対策本部が設置されるなど、各機関による情報収集や対応が進められています。

地震が起きると、XやTikTokなどではすぐに、

「数時間後にもっと大きな地震が来る」
「知り合いの関係者から聞いた」
「最近の地震はすべてつながっている」
「これは人工地震ではないか」

といった投稿が現れます。

しかし、日時や場所を特定した地震の予知は、現在の科学技術ではできません。気象庁も、SNSで広がる地震予知の風説について注意を呼びかけています。

それでも、なぜ人は信じてしまうのでしょうか。

その理由は、単に知識がないからではありません。

災害時には、普段とは違う心理状態になり、正確な情報よりも「不安に答えてくれる情報」へ引かれやすくなるからです。

災害直後は「情報の空白」が生まれる

地震が発生した直後は、誰も状況の全体を把握できていません。

  • どこまで被害が広がっているのか
  • 津波の心配はあるのか
  • 余震は続くのか
  • 家族や知人は無事なのか
  • 電気や交通はどうなるのか

公式機関も情報を確認してから発表するため、正確な情報が出るまでには時間が必要です。

ところが、人は「分からない状態」を苦手とします。

何が起こるか分からない時間が続くほど、不安が膨らみます。そして、情報が正しいかどうかよりも、何らかの答えを提示してくれる投稿を求め始めるのです。

「詳しいことはまだ分かりません」という公式発表より、

「次は○○県が危ない」
「3時間後に本震が来る」
「政府は本当のことを隠している」

と断定する投稿の方が、分かりやすく感じられます。

根拠がなくても、答えがあるだけで少し安心できてしまうのです。

不安がデマを広げる流れ

地震が起きる

情報が足りない

不安が強くなる

断定的な投稿を信じる

「念のため」で拡散する

何度も見て本当らしく感じる

災害時のデマは、悪意を持つ一人だけで広げているとは限りません。

不安になった普通の人が、家族や友人を守ろうとして共有することで、急速に広がっていきます。

不安な時ほど「強い言葉」を信じやすい

不安が強い時、人は落ち着いて情報を比較することが難しくなります。

そのため、

  • 絶対に
  • 間違いなく
  • 緊急
  • 危険
  • 今すぐ逃げて
  • 消される前に拡散して

といった強い言葉に注意を奪われやすくなります。

本来、災害情報には不確実な部分が多くあります。

しかし、「可能性があります」という慎重な説明よりも、「絶対に起きます」という断定の方が、頼もしく見えてしまうことがあります。

不安な時に求めているのは、必ずしも正確さではありません。

迷わなくてもいい答えなのです。

「念のため」がデマを拡散させる

災害時のデマは、信じ切った人だけが広めるわけではありません。

よく見られるのが、

「本当か分からないけど念のため」
「違ったらごめんなさい」
「誰かの役に立つかもしれないので共有」

という投稿です。

本人には、人をだますつもりがありません。

むしろ、

  • 家族を守りたい
  • フォロワーに危険を知らせたい
  • 誰かの役に立ちたい
  • 後から後悔したくない

という善意があります。

しかし、情報が間違っていた場合、その善意がデマの拡散を助けてしまいます。

災害時の偽・誤情報は、救命や救助、復旧活動の妨げになる可能性があります。総務省も、能登半島地震で寄付金、支援情報、不審者情報などの不確かな投稿が拡散された事例を挙げています。

「念のため」は、確認せず共有してよい理由にはならないのです。

何度も見ると「本当らしく」感じる

最初に見た時は疑っていた情報でも、SNS上で何度も見かけると、だんだん本当らしく感じることがあります。

たとえば、

「○時間後に大地震が来るらしい」

という投稿を、別々のアカウントが繰り返し投稿していたとします。

すると、

「これだけ多くの人が言っているなら、本当なのでは?」

と感じやすくなります。

しかし、投稿している100人が、それぞれ別の情報を持っているとは限りません。

実際には、最初の一つの投稿を99人がコピーしているだけかもしれません。

投稿数が多いことと、根拠が多いことは別です。

SNSでは、同じ情報が引用、転載、切り抜きによって増殖します。その結果、根拠は一つしかないのに、多数の証言が存在するように見えてしまいます。

過去の画像は「証拠」に見えやすい

文章だけの投稿より、写真や動画が付いた投稿の方が信じやすくなります。

しかし災害時には、

  • 過去の地震の映像
  • 海外で起きた災害の写真
  • 別の地域の被害画像
  • 映画やゲームの映像
  • AIで作られた画像

などが、現在の被害として拡散されることがあります。

画像は目に見えるため、強い証拠のように感じます。

しかし、画像そのものが本物でも、説明されている日時や場所が正しいとは限りません。

「本物の写真を使ったデマ」も存在するのです。

災害時に信じてはいけない投稿の特徴

まずは気象庁、自治体、警察、消防などの公式情報を確認しましょう。気象庁も、大きな地震の際にはデマに惑わされず、公式発表や自治体の呼びかけを確認するよう案内しています。

デマを否定されると、さらに信じたくなることがある

一度デマを信じて拡散すると、その後で間違いを指摘されても、すぐには認めにくくなります。

なぜなら、

「自分は人を危険にさらす情報を広めてしまった」

と認めることになるからです。

人は、自分が間違っていたと感じる苦しさを避けるために、

  • 公式が隠している
  • 否定されるということは本当なのでは
  • テレビよりSNSの方が信用できる
  • 結果的に何も起きなかっただけ

と、新しい理由を作ることがあります。

正しさを守りたいというより、間違えた自分を守りたくなっているのです。

そのため、デマを信じている人に対して、

「そんなものを信じるなんて頭が悪い」

と攻撃しても、考えを変えてもらえるとは限りません。

むしろ反発が強まり、さらに情報を信じ込むこともあります。

否定する時は、相手を責めるのではなく、

「その情報はどこが発表している?」
「気象庁の情報も一緒に確認しよう」
「投稿された日時は今日になっている?」

と、確認する方向へ誘導する方が効果的です。

デマを見つけた時にやるべきこと

災害に関する不確かな投稿を見つけた時は、すぐに引用して批判するのも注意が必要です。

批判目的の引用でも、元の情報をさらに多くの人へ見せてしまうからです。

まずは、次の点を確認します。

情報源は誰か

気象庁、自治体、警察、消防、報道機関など、発信元を確認します。

「知り合い」「関係者」「現地の友人」だけでは、情報源として十分ではありません。

投稿日時は新しいか

過去の災害情報が、現在のものとして再拡散されることがあります。

画像だけでなく、投稿された年・月・日まで確認します。

他の公式情報と一致しているか

一つの投稿だけで判断せず、複数の公式発表を比較します。

不安をあおる言葉が使われていないか

「絶対」「隠蔽」「消される」「今すぐ拡散」といった言葉で、確認より共有を急がせていないかを見ます。

分からなければ広めない

災害時は、情報を広めることだけが親切ではありません。

不確かな情報を止めることも、立派な防災行動です。

災害時に確認したい公式情報

地震に関する情報は、まず次の発信元を確認します。

  • 気象庁
  • 各自治体の公式サイト・公式SNS
  • 警察・消防
  • 内閣府防災
  • 公共放送や報道機関
  • 携帯電話会社や交通機関の公式発表

気象庁は、日時と場所を特定した地震予知は不可能だと明確に説明しています。内閣府も、災害時の偽・誤情報は救命や復旧を妨げ、犯罪につながる可能性があると注意を促しています。

SNSで見た情報を確認する時は、投稿内のリンクをそのまま開くのではなく、公式アプリや公式サイトを自分で検索してアクセスする方が安全です。

結論|デマを信じるのは、頭が悪いからではない

災害時、人は恐怖と情報不足の中に置かれます。

何が起きているのか分からない。
次に何が起きるのか分からない。
自分や家族が安全なのか分からない。

そんな時、はっきりと答えを示す投稿は魅力的に見えます。

たとえ根拠がなくても、「分からない」よりは安心できるからです。

しかし、その安心は一時的なものです。

誤った情報を広めれば、避難や救助を混乱させ、誰かを危険にさらす可能性もあります。

人は、デマを信じたいのではない。
不安から逃れるために、答えを信じたいのである。

まとめ

  • 災害直後は情報が不足し、デマが入り込む空白が生まれる
  • 不安な時ほど、断定的で強い言葉を信じやすい
  • 善意の「念のため」がデマを拡散させる
  • 同じ投稿を何度も見ると、事実のように感じやすい
  • 災害時は拡散する前に、気象庁や自治体の公式情報を確認する

次回は、「なぜ人は『みんなが言っている』と信じてしまうのか?」を解説します。

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